結婚式の直前に交通事故にあった場合の慰謝料

結婚式の直前に不幸にも交通事故の被害に遭った場合、新郎新婦はどのような対応をとるべきでしょうか。

結婚式直前に交通事故

ここでは、結婚式直前のカップルが交通事故の被害にあったときの想定しうる損害と、慰謝料について詳しくご紹介します。

結婚式のキャンセルになった場合の慰謝料

結婚式の直前にパートナー、もしくはカップルで事故にあい入院するようなケガであれば、結婚式をキャンセルしなくてはなりません。

この場合、慰謝料はとれるのでしょうか?

結婚式を中止したことに対する慰謝料は請求できない

交通事故で結婚式をキャンセルした場合、結婚式を中止したことに対する固有の慰謝料の請求は難しいでしょう。

その日のために時間をかけて準備してきた結婚式をキャンセルせざるを得ない状況は精神的にもつらいものかもしれませんが、現実では通常の交通事故の慰謝料だけが認められています。

式場やその他の費用については請求できる

ただし、事故が原因で結婚式の中止・延期を余儀なくされた場合、その実費を損害賠償として請求できます。

結婚式だけでなく、新婚旅行も中止・延期せざるを得なかった場合もその費用をすべて損害賠償請求できるので、これらの領収書は忘れずに保管しておくことです。

新婦が流産・死産となった場合の慰謝料

結婚前に新婦が妊娠し、結婚・出産前に事故の被害にあうケースも実際に起きています。

もし結婚と出産を控えた女性が、交通事故の被害に遭い、結果として流産・死産した場合、どのような慰謝料請求が認められるでしょうか。

胎児に対して慰謝料は認められない

もし事故により胎児を流産・死産してしまった場合、母親である女性のお腹の中にいる胎児には、固有の慰謝料を認めていません。

胎児の分の慰謝料を請求することは認められていないということです。

しかし、胎児の親からしてみれば、事故当時は母親のお腹の中にいるものの、時間が経てば生まれてくるはずだった大切な命を失ったことになります。

流産・死産に対する精神的苦痛を受けたことによる慰謝料請求は可能

通常の傷害慰謝料だけでは精神的苦痛に対する慰謝をしたとは認められず、これとは別に流産・死産に対する精神的苦痛を受けたことによる慰謝料請求が可能となります。

その評価は大変難しく、胎児の成長に従って慰謝料の額を決めざるを得ないのが実情です。

慰謝料の金額については評価が難しいところですが、次のような裁判例があります。

  1. 事故発生後、妊娠9週で子宮内胎児死亡と診断された女性:慰謝料200万円
  2. 右足関節ねんざ、頸部挫傷の障害、妊娠18週で胎児死亡と診断された女性:慰謝料350万円
  3. 妊娠末期の36週で胎児が死亡した事案:慰謝料700万円+父親に固有の慰謝料300万円

このように、妊娠の週数やその他の事情を考慮した上で胎児の親に対して固有の慰謝料が認められています。
父親には母親の慰謝額の半額程度が妥当とする裁判所の見解もあります。

なお、事故で頸椎ねんざとなり、放射線照射によるレントゲン検査をたびたび受けた妊娠2ヶ月の女性が、胎児の奇形を恐れて人工妊娠中絶に踏み切った事案では、裁判所は「やむを得ないもの」として慰謝料の請求を認めています。

このように、妊娠中の女性が事故の被害に遭い、中絶を余儀なくされた場合でも、やむを得ないものと判断されれば、流産と同様に考える余地があります。

婚約者が亡くなってしまった場合の慰謝料

交通事故で被害者が死亡した場合、被害者の父母、配偶者、子には固有の慰謝料請求が認められています(民法711条)。

ただし、婚姻届を提出しておらず、法的に関係のない婚約者に慰謝料の請求が認められるかどうかは、裁判所の判断が分かれています。

婚約者が亡くなった場合の判例

個別の事情により婚約者に固有の慰謝料を認めた判決と否定した判決があります。

判例1

9ヶ月間同居していた婚約者と、落ち着いたら結婚する予定だった婚約者には慰謝料100万円が認められました(大阪地裁平成27年4月10日判決)。

判例2

婚約者ではありませんが、妻が死亡し、その夫の妹が慰謝料を請求した事案では「被害者との間に民法711条所定のものと実質的に同視しうべき身分関係」があったとして慰謝料の請求を認めました(最高裁昭和49年12月17日判決)。

判例3

固有の慰謝料を否定した判決では、婚約中でありながら、以下を理由に婚約者の慰謝料請求が認められない判例もあります。

  • 同居をしていなかった
  • 結婚式の日取りや会場を抑えていたわけではなく、結婚に向けて具体的な計画がなかった

すなわち、すでに同居していて尚且つ結婚に向けて具体的な計画があった場合に固有の慰謝料請求が認められる可能性が高くなります。

詳しくは、交通事故に強い弁護士に相談してみましょう。

婚約者の顔にひどいけがをした場合の慰謝料

交通事故によって顔面を負傷した場合、事故の被害を受けたことに対する慰謝料と、顔面に消えることのない傷を負ったことに対する慰謝料の請求が認められています。
これを「外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)」といい、後遺障害慰謝料の支払いを受けることができます。

男女で金額の差はある?

平成22年6月9日までは自賠責保険でも醜状痕における男女の差がありました。

ところが、今では男女平等となり、同一の基準で慰謝料の決定がなされています。
それまでは男女で後遺障害等級に差がありましたが、平成22年6月10日以降に発生した事故では外貌醜状が残った被害者は男女の差はなくなり、慰謝料の金額も男女差がなくなりました。

外貌醜状の後遺障害等級は、醜状痕の広さ、位置、状態によって等級は異なります。
具体的には、次の3段階に別れています。

  • 外貌に著しい醜状を残すもの(第7級12号)
  • 外貌に相当程度の醜状を残すもの(第9級16号)
  • 外貌に醜状を残すもの(第12級14号)

例えば、頭部に手のひらの大きさ以上の瘢痕が残った場合、慰謝料の相場は1000万円程度になります。
顔面に10円銅貨以上の犯跡があった場合は290万円程度の支払いが認められています。

顔のキズの大きさや状態によって慰謝料に差があり、個々の事案によって判断されます。

結婚式の写真は何年、何十年にわたって残るものです。
その結婚式の写真が事故で負傷したときの醜状痕が残っているとなると、その苦痛は相当なものであることは容易に推測できます。

ですが、冒頭で述べた通り、交通事故で物理的に中止・延期となった損害賠償請求はできても慰謝料の請求自体は難しいのが現状です。
思い出に残る結婚式の写真に醜状痕が残ることに対する慰謝料の請求は難しいかもしれません。

それでもどうしても納得がいかない、あるいは詳しく知りたいという方は交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。