休業補償で交通事故にあって会社を休んだ場合でも給与を補償

業務中や通勤中に交通事故で負傷し、働けなくなってしまったとき、労働者災害補償保険(以下、「労災保険」)が支払われます。

加害者が加入する任意保険や自賠責保険とは性質が異なるため、仕事中や通勤中に事故に遭われた方は自動車保険のほかにこの労災についても知っておく必要があります。

休業補償

ここでは、労災保険から支払われる休業補償と計算方法、請求するタイミングについて詳しく説明します。

休業補償について

休業補償は、仕事中や通勤中に交通事故に遭ったとき、その働けなかった期間に減少した収入分を補償する制度のことをいいます。

特に、仕事中の事故で働けなくなったときは、休業補償給付、通勤中の事故が原因で働けなくなったときは休業給付といい、労災保険から補償金の支給を受けます。

まれに、任意保険会社が賠償する休業損害と混同して用いられることもあります。

ですが、休業損害は、事故による入通院のために仕事を休んだ際、その休んだ日数分について損害を保険会社に請求できるものであり、休業補償とは性質が異なります。

休業損害は保険会社、休業補償は労働基準監督署に対して請求するものと区別するといいでしょう。

なお、休業損害は、過失割合で被害者に責任が認められれば損害賠償金額が減額されますが、休業補償は計算方法が決まっているため、過失割合の比重が重いことを理由に減額されることはまずありません。

加害者の保険会社に治療費を負担してもらうより、労災保険による1点10円の診療を受けた方が、被害者には実質的に利益となることもあります。

被害者の過失割合が大きい場合は労災による休業補償を積極的に利用しましょう。

休業補償の計算方法

ここでは、一般的な会社員を例に説明します。

休業1日あたり、給付基礎日額の80%(内訳は休業(補償)給付60%と休業特別支給金20%の合計)が支給されます。

給与日額とは、事故が発生した日の直近3ヶ月前の給与にその3ヶ月分の日付で割って算出します。

例:月収30万円の会社員の方が事故に遭った場合

30万円×3ヶ月÷90日=10,000円

休業補償給付(10,000円×0.6)=6,000円

特別支給金(10,000円×0.2)=2,000円

6,000円+2,000円=8,000円
(1円未満の単数は切り捨て)

よって、8,000円が給与日額となります。

休業補償はいつ頃受け取れる?

事故が発生した日を含めて3日間は、休業補償の支給を受けられません。

そのため、4日目以降から支給の対象となります。

はじめの3日間は「待機期間」と呼ばれており、休業補償の支給を受けることはできません。

では、事故による負傷が軽度のもので、待機期間の3日間を待たずして治療でけがが治癒した場合、休業補償の対象にはならないのでしょうか。

労働基準法第76条により、3日間は労災保険の休業補償ではなく、会社の休業補償が支給しなければいけないことになっています。

労働者に対する会社の休業補償は絶対的な義務であり、国の労災保険に頼らずはじめの3日間だけは会社が補償を行わなければならないのです。

なお、この3日間は、連続していても断続でもどちらでもいいことになっています。

働いている人以外でも受け取れるの?

休業補償は、仕事中や通勤中に起きた事故について補償する制度です。

あくまで仕事を休んだ人の収入減少分を補償するためのものであり、就労していない者には支給が認められません。

ただし、事故当時は働いていなくても、次のケースにおいて休業補償の請求が認められることがあります。


  • 内定先が決まっており、就労の予定があった人
  • 内定先はなくても、継続的に就職活動を行っていた実績がある人
  • 就労能力がある人

被害者の就労意欲の有無、交通事故に遭わなければ就労の可能性があったかどうかが焦点となります。

事故当時、働いていなかった人でも上記のいずれかにあてはまる場合は、賃金センサス等を参考に給付基礎日額を算定して休業補償を受けられる可能性があります。

休業補償を請求するタイミング

まずは事故の状況を会社に報告し、事故の詳細が書かれた労災申請書類を作成し、事故があったことを会社に証明してもらいます。
その後、病院で治療を行い、請求書を作成してもらいましょう。
さらに、病院から受け取った請求書を労働基準監督署に提出し、支給決定の通知が届いたのち、休業補償の支給が受けられます。

通常は、労働基準監督署へ提出してから1ヶ月前後で振り込まれます。
なお、治療期間中の収入が減り生活に困窮することのないよう、1か月単位でまとめて請求するのが一般的です。

治療が長期化する見込みがある場合は、複数回に分けて請求してもいいでしょう。

労災指定病院なら手続きが比較的スムーズに進みます。

その病院が労災保険指定を受けている病院なら、病院から労災保険に治療費請求の手続きが行われます。

労災指定を受けていない病院は、治療費を全額支払い、その後請求手続きを自分で行わなければならず、手間がかかります。
可能であれば労災指定の病院で治療することをおすすめします。

有休休暇を使っていた場合でももらえるの?

休業補償で支給を受けられる金額は給与基礎日額の8割程度で、通常の収入よりも2割減少することになります。

また、休業補償支給の手続きが煩雑であることを嫌い、有給休暇を利用しているケースが多く見られます。

有給休暇なら、休養補償の手続きが不要で、尚且つ給与基礎日額全額を支給する会社もあるからです。

では、この場合だと仕事を休んでいても通常通りの給与の支給を受けているため、損害はなかったものとみなされるのでしょうか。

判例では、有給休暇にも財産的価値を認めています。

有給休暇を使用して交通事故の治療を受けたということは、交通事故の被害に遭わなければ当該有給休暇を使用する予定はなかったはずだからです。

ですから、有給休暇を使用して治療を行った場合でも、休業補償の支給を受けることができます。

しかし、補償を受けるのは負傷した労働者であり、本人が有給休暇を利用して治療を希望している場合は、有給休暇を消化したものとして扱うことが認められています。

有給休暇を利用して治療を継続する方は、残りの有給休暇の日数を把握した上で治療を続けると良いでしょう。