交通事故で車が全損になった場合に請求できる費用について

交通事故で被害が及ぶのは、人に限ったことではありません。
車や建物などの物的損害についても被害を受けたとき、損害賠償を請求することが可能です。
車の全損

特に車の場合は、被害状況や年数によって損害額が変わってくるため、金額の算出方法がやや複雑になります。

ここでは、車が損害を受け、損害賠償請求を行う際にどのような事情を考慮して決めていくのかを詳しく解説します。

車の全損について

車の全損とは、修理しても事故前のような状態には戻れないほど修復不可能であることを言います。

修理をしても走行し支障をきたし、完全な修復ができない場合、あるいは原形をとどめていないほどにひどく破損している場合に、全損したものとして加害者に対して買い替え費用の請求を認めています。
車両価格よりも修理費用が高額である場合も買い替え費用の請求が可能です。

被害車両の評価額は、車両の購入時に支払った価格ではなく、事故当時の取引価格である時価で判断されます。
これは、被害者が同一の中古車両を購入することを想定しているためです。
車種だけでなく、型式や年式、同程度の走行距離などを鑑み、中古市場でどの程度で取引されている価格を損害額として請求できます。

ですから、たとえ数か月前に購入したばかりの新車が事故に遭ったとしても、中古であることに変わりはないため、中古市場での価格で損害賠償請求をすることになります。

なお、全損した車両の被害総額を算出する際に基準となる2種類の全損があります。

物理的全損

被害車両が修理できないほどに損傷していることをいいます。

通常の修理であれば、その修理費用を損害額として請求できますが、修理できないとなると損害額の算出ができなくなるため、事故当時の車両の時価額を損害として考えます。

経済的全損

経済的な理由で修理ができないことをいいます。

例えば、車の修理費用が60万円、事故時の時価額が20万円の場合、損害額は20万円となりますが、残り40万円の修理費用を被害者が負担することになるのでしょうか。

判例によれば、修理費用を損害額とするのではなく、通称レッドブックと呼ばれている有限会社オートガイド社のオートガイドを参考に、その当時の時価額を損害賠償請求できるものとして認めています。

他にも、市場に出回っている中古雑誌も時価額を決める際の参考にすることもあります。

保険会社に請求できるお金

被害者と加害者両方の保険会社から、お金を受け取ることができます。
どちらにどの費用を請求できるかよく確認してから手続きを進めましょう。

加入している保険会社への請求

事故に遭った際、自分が加入している保険会社から受け取れるお金があります。
受け取るお金は次のようなものがあります。

  • 車両保険金
  • 臨時費用(被害車両が全損の場合。車両保険金に10~20%上乗せした金額)
  • 全損保険金(被害車両が全損の場合。全損時諸費用と呼ばれることも)
  • レッカー代
  • 全損超過修理特約(全損超過修理特約に加入している場合。車両保険金に30~50万円程度上乗せされる)
  • 新車特約(新車特約に加入している場合。契約時に設定した金額の範囲内なら自己負担なしで新車の購入費用を受け取れる)
  • 代車費用特約(代車費用特約に加入している場合。上限30日)

代車費用特約を利用する場合、代車の必要性があったのかどうかがポイントで、もし代車の必要性がないと判断されれば請求ができなくなります。

自家用車はその必要性が認められにくい傾向があります。
ですが、通勤などで日常的に使用しているのであれば、必要と判断されます。

対象となる期間は、被害車両の修理が完了するまで、買い替えが認められた場合は、買い替えに必要な期間が認められます。

なお、被害車両が高級外車でも、代車は高級外車である必要はなく、国産車で足りるとされています。

相手の保険会社への請求

被害車両を修理している間、車の使用ができなくなったためにレンタカーやタクシーなどの貸借費用が発生した場合、相手の過失が100%であればレンタカー費用を請求できます。

ただし、車両を購入しなおす場合、納車までの期間レンタカー代を請求できるわけではなく、利用開始から2週間程度の限度が設けられているケースがほとんどです。

もし車を新しく買う場合は、事故直後の多忙な時期でもできるだけ早く購入手続きをすすることをおすすめします。

請求できないもの

車に対する「思い入れ」は損害賠償請求の対象にはなりません。

長年乗り続けた車で愛着があるというケースも見られますが、基本的には物損事故で慰謝料の請求が認められることはまずありません。

自動車の破損については、修理や買い替えによって損害の回復が可能であるため、精神的苦痛に対する慰謝料請求は認められていないのです。

レアな高級車やクラシックカーなども同様で、慰謝料請求が認められるケースは極めて稀なことです。

事故の相手が任意保険に入っていない場合は請求できないの?

国内ではドライバーの約7割は任意保険に加入していると言われています。

任意保険に加入していれば、保険会社から物的損害の賠償を請求できるのに対し、強制保険では物的損害が補償されていません。

万が一、加害車両が任意保険に加入していなかった場合、人身保障しか受けられず、物的損害の賠償請求はできないのでしょうか。

実務では、民法709条の不法行為に基づき、加害者本人に対し直接、損害賠償の請求が可能となります。

ただ、加害者本人と直接交渉しても実りある結果を得られるのは難しいのが現状です。

弁護士に依頼して請求手続きに法的効果を持たせることで、確実に損害賠償金を得られるようにしましょう。

金額に不満があれば弁護士に相談

被害車両の修理費用が予想以上にかかったために、交渉の場で揉めるケースが多く見られます。

そのような事態を防ぐためにも、確実に修理を依頼し、費用はどれくらいかかるかなど、当事者間でよく話し合っておくことをおすすめします。

それでも保険会社が提示する車の評価額に不満がある場合は、まずは弁護士に相談しましょう。
おすすめ記事 交通事故の示談は弁護士に相談・依頼しよう

物理的全損も経済的全損も、評価額を決める上で明確な計算式などはなく、裁判でその金額を決めることもあるほど判断が難しいのが現実です。

保険会社が算出した金額は、あくまで保険会社独自の基準で相当と認めた金額であり、その基準は相当低いものですから、納得のいく示談金を得られないことがほとんどです。

公平な判断を仰ぐためにも、金額が妥当かどうか弁護士に相談してみてください。

そして弁護士が算出した金額とあまりにも開きがある場合には、金額を引き上げてもらうよう交渉することをおすすめします。
まだ、弁護士を探していない方は、交通事故問題に強い弁護士の探す方法をお読み下さい。