交通事故は、加害者の一方的な過失によって起こることもありますが、実は被害者にも過失があるケースが多いものです。
そして、双方の過失の比重を0~100の数値で表す過失割合は、示談交渉で揉めやすく、双方にとって悩みの種となります。
ただ、過失割合はある程度類型化されており、その基準を参考に加害者が加入する保険会社が過失割合を判断しています。
しかし、被害者側は保険会社が提示するか室割合に納得がいかないという人が多いのが現状です。
ここでは、その保険会社が提示した過失割合に納得がいかない場合の対処法と注意点についてご紹介します。
過失割合は保険会社との交渉で揉めやすい
もし被害者にも過失があるとするなら、損害を公平に負担するという意味では、その過失の程度に応じて、被害者も損害賠償をしなければならないことになります。
交通事故の被害者にもかかわらず、責任の一端が被害者にもあるかのように言われて、納得がいかない被害者と保険会社との間で過失割合ではよく揉めます。
保険会社としては、損害賠償金をできるだけ支払いたくないのが本音で、被害者の落ち度を探そうとしたり、加害者側の主張だけを参考に過失割合を決めていたりする可能性もあります。
過失割合が下がると損害賠償額が高くなってしまう
過失割合の比重によって損害賠償金額が大きく左右するため、過失割合は非常に重要な問題となります。
例えば、被害者の被害総額が500万円、なおかつ被害者の過失割合が50%あったとします。加害者は被害者に対して500万円の損害賠償義務が発生します。
ですが、事故が発生した原因の50%は被害者に責任があるため、全損害額の50%が相殺され、実際に受け取れる損害賠償金額は250万円に減額されてしまうのです。
実務上、過失割合は5%、10%単位で決まることがほとんどですから、この事例では5%違うだけで25万円もの差が出ることになります。
被害者としては、できるだけ高額な損害賠償金を受け取りたいと思うのが普通です。
過失割合は少ないにこしたことはありません。
反対に、損害賠償金をできるだけ払いたくない保険会社は、できるだけ被害者の過失割合を加算しようとすることもあり、双方の思惑が一致しないために過失割合の比重で揉めてしまうのです。
そのようなとき、被害者は保険会社の言いなりにならずに、過失割合を提示された段階でまずは疑ってみることが大切です。
過失割合の提示は鵜呑みにしない
確かに保険会社は交通事故の示談交渉を何度も経験しているし、過失割合についても知識が豊富です。
ただ、それを理由に保険会社が提示した過失割合を鵜呑みしてはいけません。
先述した通り、損害賠償金をできるだけ払いたくない保険会社が加害者の過失割合を低く設定している可能性があるからです。
被害者は、毅然とした態度で交渉に臨み、保険会社の言うことに安易に妥協しないことです。
保険会社の提示する過失割合や損害賠償金額に法的な拘束力はなく、被害者は示談が成立するまではいつでも否定できますし、納得がいかなければ説明を求め、粘り強く交渉する権利があります。
相手がその道のプロだからといって、保険会社の主張を過信しないようにしてください。
どの事例を根拠にしているか確認する
ほとんどの保険会社で、過失割合の算定の際、別冊判例タイムズの「民事交通訴訟における過失相殺等の認定基準(以下、「過失相殺等認定基準」)」という、過去の判例を掲載した資料を参考にしています。
この資料には、事故の多様な場面において、歩行者・四輪車・交差点・信号機の有無などを事故の場所や態様などの要素によってそれぞれの過失割合の基本割合が列挙されています。
過失相殺等認定基準を参考に、次に挙げる要素が具体的事故の過失割合を考える上での基礎となります。
- 事故の当事者
- 事故現場の状況
- 事故の態様
車対車、車対歩行者というように、双方の属性によって割合は異なります。
ただし、歩行者は優先して保護されるべきであるという被害者保護の観点が、過失割合においても考慮されます。
信号の有無、道路の優先関係、事故が発生した時間なども考慮されて過失割合が決まることがあります。
歩行者との事故なら幼児、高齢者などの属性、歩行態様(交差点を横断中、歩道を歩行中など)、車の走行態様(Uターン中、直進、右左折など)も考慮されます。
過失相殺等認定基準をもとに過失割合を導き出した後、このような要素に応じて過失割合が増減して、個々の事故に応じたより正確な過失割合を算出していきます。
これを修正要素といい、過失割合を増やしたり減らしたりすることで、公平を図っていくことになります。
ですから、保険会社から過失割合の提示を受けたら、どの判例を参考に過失割合を決めたのか、コピーを送ってもらうことをおすすめします。
なぜなら、保険会社が被害者の無知を理由に、過失割合の算定を正確に行っていない可能性もあるためです。
他にも、その過失割合に決めた根拠を確認するために、次のような質問をぶつけてみてください。
- どのような判例を参考にし、どのような修正要素が加えられてその過失割合になったのか
- 加害者の言い分だけを尊重していないか
- 実際に事故現場を見たか
保険会社から事故の原因の一部は自分にもあると言われているようで、納得がいかないと激昂する被害者の方もいらっしゃいますが、それでは逆効果で保険会社は対処してくれません。
あくまで冷静さを保ち、誠意をもって話を聞く姿勢を示すことです。被害者は、少しでも自分に有利に交渉が展開するよう主張し、証拠を提出し、論理を展開していきます。
過失割合の交渉は弁護士に相談してみる
しかしながら、示談交渉を何度も経験している保険会社に対して、被害者が対等に交渉を進めていくのは極めて困難です。
保険会社と同様に、示談交渉を何度も経験している弁護士なら、被害者の示談交渉のサポートが可能です。
保険会社の提示する過失割合に納得がいかない、あるいは保険会社が過失割合の修正に応じない場合は、ぜひ交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。